遺産相続の手続き
遺産相続の手続きは、「死亡届の提出」から始まり、「遺言書の有無の確認」、「遺産相続人の確定」、「相続財産・負債の調査・確定・評価」、「遺産分割協議」、「相続財産の名義変更」、「相続税の申告・納付」など、さまざまなことを行う必要があります。ひとつひとつ確実におこなっていきましょう。
遺産相続が起こったら初めにすること
遺産相続の手続きは、役所や社会保険事務所に死亡届を提出することから始まります。
遺産相続は、死亡届を出すことから始まる
遺産相続の手続きは、役所に死亡届を提出することから始まります。
医師の書いた死亡診断書を添付して、住所地・本籍地・死亡地のいずれかの市区町村役場に届けます。死亡届けの提出によって故人が戸籍から除籍となり、遺産相続の事実が確定し、相続人の確定などの手続きができるようになります。
年金停止の手続き
故人が年金を受給していた場合には、死亡届を提出して年金停止の手続きをする必要があります。
死亡届の提出先は、住所地を管轄する社会保険事務所です。この手続きをおこなわないと、年金が継続して故人の通帳に払い込まれてしまいます。そうなると、後で遺族が返金する必要がでてきます。早めに手続きをおこなってください。
遺言書があるかどうかを確認する
遺言書があるかどうかによって、その後の遺産相続の手続きが変わってきます。
遺言書がない場合には、遺産相続人の協議によって相続財産を分割します。一方、遺言書がある場合には、その遺言書が公正証書遺言かどうかを確認します。もし、公正証書遺言以外の遺言書のときは、家庭裁判所で検認を受ける必要があります。
遺言書を開封するとき
公正証書遺言を除いて、遺言書は家庭裁判所の検認が必要となります。また、封印がある遺言書の場合は、家庭裁判所で開封しなければなりません(勝手に開封してはいけません)。
検認とは、遺言書の内容や体裁を確認し、偽造・変造を防止するための証拠保全を目的とするものです。したがって、遺言が有効か無効かということには家庭裁判所は関知しません。具体的には、遺言書の住所地の所轄家庭裁判所に「遺言書検認申立書」とともに、遺言書を提出することで検認証書が作成されます。
遺産の相続人を確定する
遺産を分割する場合、どの人に遺産相続の権利があるのか、権利を持っている人は何人いるのかを確認する必要があります。
故人に配偶者がいる場合には、婚姻期間に関係なく相続人となる権利があります。ここでいう配偶者とは婚姻届を提出している場合で、婚姻届を提出していない(いわゆる内縁の夫婦)場合には、相続人とはなりません。
故人の子ども・両親・兄弟は、 民法に相続人となる順番が次のように規定されています。 第1順位の人がいない場合には第2順位の人が、第2順位の人もいない場合には第3順位の人が相続人となり、遺産を引き継ぐことができます。
(1)第1順位 子
(2)第2順位 父母
(3)第3順位 兄弟姉妹
借金が多いときは、限定承認または相続放棄ができる
遺産相続とは、故人の権利関係をすべて引き継ぐことです。
通常、遺産相続といいますと、不動産や預貯金、現金、自動車などの財産のみを引き継ぎ、借金は引き継がないようなイメージがあります。しかし、故人の財産上の地位をすべて引き継ぐわけですから、借金などのマイナスの財産も併せて相続することになります。
ただし、故人のマイナスの財産を必ず引き継ぐ必要はありません。限定承認あるいは相続放棄をいう手続きをおこなえば、マイナスの財産を相続しなくてすみます。
「限定承認」とは?
相続する遺産にプラスの財産とマイナスの財産がある場合、プラス財産の限度でマイナス財産も相続して、それ以上のマイナス財産は相続しないという方法があります。これを限定承認といいます。
たとえば、遺産を計算した結果、プラス財産が50、マイナス財産が80になったとします。このようなケースで限定承認を選ぶと、プラス財産の50分だけマイナス財産を相続し、残りの30のマイナス財産は承継しません。
「相続の放棄」とは?
相続の放棄とは、遺産相続を拒否することです。遺産相続を放棄すると、放棄した相続人は遺産相続に関して初めから相続人にならなかったものとみなされます。
遺産相続の放棄は、借金が多い場合のみならず、相続する遺産をひとりにすべて相続させたい場合や、感情的な面から相続をしたくない場合などにも利用されます。ただし、故人に相続放棄していない子・親・兄弟がいると、相続の権利は民法に規定する順番に移動します。
たとえば、遺産が1,000万円で、配偶者と子A、子Bの3人が相続人の場合、法定相続分は配偶者が遺産の半分の500万円、子Aと子Bがそれぞれ250万円となります。もし、子Bが相続放棄をすれば、配偶者と子Aがそれぞれ500万円ずつ相続します。また、子Aと子Bの2人とも相続放棄をすれば、配偶者ひとりがすべての遺産をそ相続することになります(ただし、被相続人に親兄弟がいない場合を想定しています)。
限定承認と相続の放棄の手続き方法
限定承認、相続の放棄をしようとする場合は、相続人が遺産相続の開始があったことを知った日から3カ月以内に、その旨を家庭裁判所に申請しなければなりません。
故人の遺産を計算する(遺産目録の作成)
負債も含め、故人が残した全財産の総額を算出し、遺産目録を作成します。
土地、株式、家屋などの評価額は評価する人間により大きく異なり、相続税にも影響します。税金対策には、実績のある税理士に依頼することをおすすめします。
土地の評価方法
土地の評価方法は自分の宅地として使用してるのか、他人に貸しているかなど、利用方法によって変わります。評価方法が違えば、当然、土地の評価額も変わります。その結果、納付する相続税額にも差が出てきます。
宅地の評価方法は「路線価方式」と「倍率方式」の2つ
宅地は、1利用区分ごとに評価します。したがって、必ずしも1筆の宅地からなるとは限りません。1利用区分で複数の筆からなる場合、逆に1筆で2利用区分ある場合など、さまざまな形態があります(1筆とは、登記をする際の単位です)。
まずは、該当する土地の路線価を調べます。路線価図は、税務署で閲覧するか国税庁のホームページで見ることができます。路線価図を入手したら、次にその土地が路線価地域にあるのか、倍率地域にあるのかを確認します。
1)市街地なら路線価方式
路線価図には、その路線に面する土地1m2当りの評価額および借地権割合等が記載されています。評価額は路線価×地積で求められます。路線価は、公示価格の80%を目安に設定されています。
2)市街地以外なら倍率方式
路線価が付されていない地域は倍率地域といい、固定資産税評価額×倍率で評価額を求めます。倍率は、路線価図に別途記載されている倍率表を用います。
自分で使っていない土地の評価方法は、利用の仕方によって3つある
ご自分が宅地として使用している以外の土地、たとえば貸している土地の評価方法は以下の3通りあります。
1)貸宅地の評価方法
貸宅地は、ご自身が所有している土地であっても他人の家屋が建っているため、相当な利用制限を受けることになります。したがって、貸宅地の評価では、自用地の評価から借地権相当額を控除し、評価します。
借地権相当額=自用地評価額×借地権割合
2)貸家建付地の評価方法
貸家建付地とは、マンションや貸家として利用している宅地のことです。この場合も、借家人が立退かない限り、敷地を自由に処分することはできません。したがって、貸家建付地の評価では、自用地の評価から制約を受ける部分を控除して、評価することになっています。
制約を受ける部分=自用地評価額×
借地権割合×借家権割合×賃貸割合
3)借地権の評価方法
土地を借りて家屋を建てている場合には、借地権の評価をしなければなりません。借地権は貸宅地と表裏一体のものですので、貸宅地の評価方法で述べたとおり、下記のようになります。
借地権=自用地評価額×借地権割合
株式の評価方法
株式の評価方法は、上場している場合と上場していない場合とで異なります。
上場株式の評価方法
上場株式とは、証券取引所(東京、大阪、名古屋、札幌、福岡の5カ所)に上場されている株式をいいます。上場株式の評価は銘柄ごとにおこないます。具体的には、相続の開始日や贈与した日の終値、またはその月以前の3カ月間の終値(平均額)の中でもっとも低い価額とします。
取引相場のない株式の評価方法
取引相場のない株式とは、上場株および気配相場のある株以外の株式のことです。この株式は通常の取引相場(市場価格)がないので、上場株のように一律に評価せず、その取得者の所有目的によって異なる評価をします。また、株式会社以外の有限会社、医療法人、企業組合に対する出資についても、取引相場のない株式の評価方法に準じて評価します。
1)原則的評価方法
その取得者の所有目的が、会社の支配や経営権の行使にあると認められる場合の評価方法です。この評価は、発行会社の規模や取引金額により下記の3つに区分されます。
(a)大会社(類似業種比準価額方式)
その会社と類似する業種の上場会社の株価に、会社の配当・利益・純資産の3要素を比較して出した割合を
乗じて評価する方式です。
(b)中会社(併用方式)
大会社と小会社との併用方式によって評価します。
(c)小会社(純資産価額方式)
その会社の有する資産の評価額から、負債の評価額を控除した純資産価額を基に評価します。
2)特例的評価方式
同族株主以外の人が取得した場合には、会社の支配や経営権の行使というより、配当を期待していると考えられるため、受取配当金を基にした配当還元方式により評価します。
土地と株式以外の遺産の評価方法
相続税の計算は、原則として、遺産相続が発生したときの故人の所有する相続財産すべてを時価で評価し、「換金したらいくらになるのか?」という立場にたっています。 しかし、すべての相続財産について、このように的確に財産価値が引き出せるものではありません。
相続税や贈与税の対象になる相続財産は、土地や家等の不動産、家財、営業権や著作権などの権利、有価証券や金融資産、ゴルフ会員権、骨董品など、さまざまなものがあります。これらの財産評価の手法は国税庁の財産評価通達に盛り込まれています。
家屋の評価
1)自家用家屋の場合
自家用家屋の評価は、固定資産税評価額と同額になります。固定資産税評価額は、市区町村(東京23区の場合は都税事務所)で発行する「固定資産評価証明書」に記載されています。
2)貸家の場合
貸家の場合は、固定資産税評価額×(1−借家権割合×賃貸割合)となります。借家権割合は、通常30%ですが、大阪国税局管内の一部地域では40%のところもあります。
金融資産等の評価
1)預貯金の場合
預貯金は原則として、相続開始日の預け入れ残高と、それまでの経過利息を合計し、その預金利息から源泉税を差し引いた金額を相続財産の評価額とします。
2)貸付金等債権の場合
貸付金等債権については、元本の金額に経過利息分を加えたものとなります。ただし、この貸付債権等の相手が破産、会社更正法等の適用があり、回収が不可能と判断されるものは、元本の価額に含まれないで済みます。
ゴルフ会員権の評価
1)取引相場のある会員権
取引相場のある会員権の場合は、通常、取引価額×70%で評価します。別に返還を受けることができる預託金等がある場合は、その金額を加算することになります。
2)取引相場のない会員権
取引相場のない会員権の場合は、株主制度を採用するものと預託金制度を採用するもの、双方を並行採用するものによって異なります。株主制度のものは、「株式として評価した金額」で評価します。預託金制度を採用するものは「返還を受ける預託金等の金額」で評価し、併用制度の場合は「株式として評価した金額」と「預託金等として評価した金額」の合計で評価します。
3)プレー権のみの会員権
プレー権のみの会員権は、評価ゼロの扱いになります。
遺産分割を協議する
相続財産の相続人がひとりだけの場合、相続放棄をしない限り、すべての遺産を相続することとなります。また、相続人が複数人いて遺産分割をしていない状態では、すべての相続財産は相続人全員で共有していることになります。
民法上では、遺産分割の期限に関する規定はありませんが、相続税は亡くなったときから10カ月以内に申告しなければなりません。未分割のまま申告すると、評価の特例や税額控除など相続税法上有利となるものが使えず、不利益を被ることもあります。税金対策のうえでも、遺産分割はスムーズにおこないましょう。
遺産分割協議をするのは誰か
遺産相続が発生しますと、相続人が複数人いる場合には、故人の財産債務をすべての相続人が共有することになります。このような状態を解消し、個別の財産や債務を個々の相続人に帰属させるための手続きを遺産分割といいます。遺産分割の協議は、かならず相続人全員でおこなってください。一部の相続人だけで協議しても、それは無効となります。
いつまでに協議をするのか
遺産分割に、定められた期限はありません。しかし、分割が完了するまでは、相続人全員で遺産を共有することになるので使いにくいですし、分割が長引くと遺産管理などの問題が生じることもあります。一般的には、相続税の申告期限が相続開始から10カ月以内とされていることから、これを目標に遺産分割協議をおこなっています。
遺産分割の基準
相続遺産は相続人全員の合意があれば、自由に分割できます。他の相続人が納得すれば、ひとりだけが遺産相続してもよいのです。ただし、遺留分は考慮したほうがよいでしょう。なお、遺言があっても、相続人全員が合意すれば、異なった遺産分割をしてもかまいません。
各種書類の名義を変更する
故人が所有していた財産によって、名義変更の手続きは異なります。必要書類など確認しておきましょう。
名義変更とは
遺産分割の話がまとまると、故人の財産は各相続人の財産になります。しかし故人の名義であった預金通帳や不動産の名義が自動的に変更されるわけではありません。故人の名義から遺産を取得した相続人の名義に変更する手続きが必要です。
土地・建物の名義変更
土地や建物の名義変更は、その不動産の所在地を管轄する法務局でおこないます。財産価値が高いだけに、司法書士に手続きを依頼している人がほとんどです。
預貯金の名義変更
金融機関によって手続きが異なります。事前に必要な用紙を取り寄せましょう。
株式の名義変更
株券を数社の証券会社に預けている場合は、預貯金と同様、各証券会社に事前に連絡し、必要書類を準備しましょう。
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